プログラマーからトラック運転手へ転職し株するブログ

旅行記、体験記、株式投資など〜(´▽`*)

永田という男



ある日、一人の男が入社した。
その男の名は、永田、といった。

某有名中古自動車販売店に入社後、32歳で社内営業マンの中で全国1位を獲り、翌年連覇。
「この会社に、俺が学ぶべきことはもうない」
と、突然某上場大手運送会社へ転職。ただのドライバーから始めるも、持ち前の能力をフルに発揮して40手前でセンター長に。
たくさんの部下を持ったことで、人を育てることに面白味を感じ、
「大きな会社をより大きくするより、小さな会社を大きくする方がもっと面白いんじゃないか?」
と感じ、某中小運送会社へ転職。が、安全面を最優先する永田に対し、社長は利益を最優先したため度々衝突。そんな中、配達中に人身事故が発生。それでも利益を最優先する社長の姿勢は変わらず、キレた社長が永田に言い放った、
「とりあえず誰も死んでねーだろ? 何が問題なんだ?」
にキレて退職。

そうして、永田は従業員十数名、トラック18台のウチの会社にやって来た。

背は170cmくらい、中肉中背。髪型はオールバック、元営業だけあって普段の目つきは柔らかめだけど人を見る時の目力は強し。何かつけているのだろう、ちょっといい匂いがする。


最初のミーティングの時から、永田はなかなか強烈だった。
入社後のよくある自己紹介は、名前、簡単な経歴、趣味、この会社でやりたいことなど、短い人なら1分も喋らず、長い人でも10分程度ではないだろうか。

永田は自己紹介と称してナント70分近く一気に喋りとおした。…永田独演会かっ!
冒頭に書いたような経歴を話した後、なぜ安全面が最優先されるべきなのかの思いを熱く語った。
前職で安全面を軽んじていた社長に懲りたので、この会社に入社する前に、社長に「ホントに安全面を最優先する経営をしますか?」と何度も確認し、最終的には社長に念書まで書かせたそうな。

「俺はこの会社を、まずはこの街で一番の運送会社にする! そういうつもりで入って来てるから」

とブチ上げる永田。
これを聞いて、思わず吹き出すドライバーの釜本。

「おい、あんた。今なんか笑ったろ」

釜本を指さして、にらむ永田。
一気にピリつく室内の空気。

釜本は、「え〜、最初のミーティングなのに永田ちゃんこんな感じで来ちゃうんだあ」とおどけた顔を辺りにしてから、

「あ、すんません、今のってちょっと思い出し笑いみたいです。ははっ」

と何本か脱落している前歯を見せた。永田はこれ以上は釜本につっかからず、

「みなさんが銀行でローンを組もうとした時に、ウチの会社名を言うだけで行員が『あー、あの会社の社員さんでしたか。でしたら、審査は必要ありません。いくらでもお貸しします』って言われるくらいの会社を目指すし、そういう会社にするつもりで俺は来てるから!」

おいおい、止まんねーな、永田!
ウチが地域で一番?
社員が無審査でローンが通るような会社を目指すだって?
社員が20人もいない、この超ちっせー会社が?

冗談を言ってるなら全然面白くないし、
本気で言ってるならアホやでこいつ。

と、冷ややかなドライバー連中。

そんな中、一人燃えたぎる男、
その名は永田。

(『永田という男◆戮砲弔鼎)

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転職会議



「ドライバーとサシで話がしたい」

という永田の意向で、その日、私は配達の合間に休憩室へ行った。
休憩室に入ると、永田は既に座っていた。暑い日だった。休憩室は冷房が切ってあり、イスに座るなり汗が出て来たので、私はウチワを片手に永田と向かいあった。

「ん? 株六くん、暑いか? じゃ、冷房入れよう。これから腹を割って話そうって時に、ウチワ片手に話すって、それはねえだろ。こういうとこからちゃんとしていこう」

と永田。

…こ、これわなんか面倒くさい人かも。。

永田は、大学出て何でドライバーなんかやってんの? とか、百歩譲ってドライバーでもいいとしてよりによってなんでこんな会社にいるの? など色々と失礼なことを言った挙句、プログラマの方が全然稼げるだろうし冷房きいたとこでパソコンぴこぴこやってた方が絶対良かったんじゃないの? などと、どこかで聞いたフレーズを言って来るし。。

結局、この時はただ雑談をしていろいろとディスられて終わっただけの印象。なんだったんだ、この時間。

ちょいちょいやらかすドライバーの吉田は、第一声で永田に、
「で、次はいつぶつける予定? なんつって」
と半笑いでいきなり言われて、怒りのあまり何を話したのか全然覚えてないそうな。

ほとんどのドライバーが、「永田、人間的にビミョーじゃね?」と思う中、ドライバーリーダーの今岡だけは、「永田さんはすげえ人だよ。俺達とは次元が違うよ。永田さんとならホントにてっぺんとれんじゃねーの?」などとなぜか心酔してるし。

ところで、運送業では、出庫前にトラックの日常点検をすることが法律で義務付けられており。
オイルレベル、冷却水の量、タイヤ空気圧、ホイールナットがゆるんでないかなど。大手の運送屋ならきっと真面目にやっているだろうけど、零細運送屋ではちゃんとやってる会社の方が少ない印象。ウチの会社は最低限オイルレベルと冷却水のチェックはすることになってはいたものの、9割のドライバーは何も点検せずにすぐ出庫。(言い訳すれば、FUSO車の4トンってキャブ上げないとオイルチェックができないので、それを面倒くさがる。それにホントにヤバイ時は何か警告出るだろ、というセンサーへの過信)
車庫にも監視カメラがあるので、ドライバーが日常点検をやっているかどうかはその録画を見れば一発で分かる。当然、経営層もほとんどのドライバーがサボっていることは分かっていたはず。

安全面を最優先する永田がここに噛みつかないわけがない。
次のミーティングで、
「日常点検は努力義務ではなく、法律で定められた義務なわけ。義務って分かる? やった方が良いことではなく、やらなければならないこと。自分の命を預けるんだから、乗る前にちゃんとチェックしようぜ。高速上でオーバーヒートして急に止まったらどうする? で、そこに荷物満載した大型が思っきり追突してきたら? そう、ピンピンコロリならぬ、ピンピングチャでおしまいです。あ、吉田くんはピンピングチャグチャかな。なんつって」
と相変わらずの永田節全開。

ミーティング後、なるほどね、と素直に日常点検をするようになるドライバーもいれば、やったりやらなかったりするのもいる。そして、
「これで日常点検をするようになったら、それは俺が永尾に屈服したことを意味する。あいつにだけは絶対に負けられん。そして許さんぞ、俺は永尾という男を絶対に、だ!」と鼻息荒く、相変わらず日常点検を頑なにしない吉田。…てか吉田よ、永尾じゃなくて永田ね。

ある日の午前3時50分点呼、4時出庫な仕事の日の出来事。
点呼して車庫へ行き、辺りはまだ暗い中、キャブを上げてオイルチェックをしていたら、
「株六くん、おはよう。ちゃんと日常点検してるね。ま、株六くんは大丈夫だと思ってたけどね」
と、闇の中から現れたのは、まさかの社長。ええっ?! あんた、朝っぱらからこんなとこで何してんの?
聞けば、永田が事務所で盛大に吠えたらしい。
「ミーティングであれだけ言っても相変わらず日常点検をしない奴がいるから、社長と専務で全ドライバーの出庫を毎回チェックしろ。だって社長、念書に書いただろ書きましたよね、安全を最優先する経営をしますって。上が約束守らなくて、下がどうしてルールを守るんだよ!」

社長だろうと容赦しない男、
その名は永田。

(『永田という男』につづく)
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転職会議

ひふみ投信

出庫時に社長や専務に張りつかれてはさすがの吉田も日常点検をやらないわけにはいかず、しぶしぶ点検をするようになった。
「永尾のヤロー、やり方が汚ぇ。俺はグーで、永尾はチョキだった。そこで俺には敵わないと思ったキャローは、パーな社長を連れてきたってわけだ。俺はグーだ。パーな社長には勝てん」

パーな社長パーな社長って、吉田、ひょっとして何か他意あるんじゃ?w

にしても、確実に日常点検をしたところで売上があがるわけではない。
「ウチは運行前に、確実に日常点検をしています!」
なんてお客さんへ声高にアピールすることでもない。本来、やってて当たり前のことなわけで。

次のミーティングで永田が静かに話し始めた。
「事務所側の人間がいくらお客さんのところへ営業に行っても、実際の現場でお客さんに向き合うのはキミらドライバーなわけ。だから、みんなには元気よくハキハキとあいさつしてほしいわけ。じゃ、吉田くん、早速ちょっとやってみて」

吉田はいかにもだるそうに、

「は? なんで俺が?」

永田はそれを聞き、いやらしい笑顔を浮かべながらウンウンと何度かうなづいた後、
「ほら出た。みんな聞いた? これ。これが典型的な悪い例。お客さんに何か頼まれて、『は? なんで俺が?』なんて応えるのは最悪だよね。で、吉田くんだけがそう見られるんじゃなくて、もうウチの会社全体が吉田くんみたいなそういう最悪な会社だと見られちゃうんだね。じゃ次、今岡リーダー、ちょっとやってみて」

「こんにちは! グッドトランスポートの今岡です! お荷物を引き取りに伺いました!」

と言い、ニカっ、とサイコーの笑顔でフィニッシュする今岡。
今岡うんこリーダーよ、あんた確実にエロいな。。

永田は喜んで「いいねいいね」と手を叩き、
「さすが今岡リーダー、すごい! 完璧! 100点満点中で600点て感じ。…それにしても、同じ会社にいて同じドライバーでなんでこんなに差がついちゃうんダロー」

「ちょっといいっすか」

突然、釜本が手を挙げ、

「永田さん、あいさつあいさつ言うけど、永田さんは俺たちに全然あいさつしないじゃないすか。自分じゃできてないことを人に求めるのってちょっとどうなんだろ」

と、不意打ちをくらう永田。永田は頭のてっぺんを右手の中指でポリポリかきながら、
「あれ〜、俺あいさつできてなかった? ホント? その認識はなかったかも。以後、気を付けます。すみません」
と言い、急にしゅんとなって大人しくなるし。え? 永田、まさか凹んでんの?? これはちょっと意外な一面。

永田はひょっとして蓮舫とか猪瀬直樹と同じタイプなのかしら。攻撃力はめちゃくちゃあるけど、防御力がほぼゼロで一転攻められるとそれまでの舌鋒の鋭さはどこへやら、ヘラヘラと卑屈な笑顔の防戦一方になってまうとか?

ミーティング後に吉田は、永田から一矢報いた釜本を称賛し、嬉々として飲みに誘ってたけど、釜本に「オレ、別に吉田さんの仲間とかじゃないんで」とすぐに断られていたw

余談:
筋金入りのドライバーの多くは、Yes or Noをハッキリ言う人が多くて、人づき合い的にとても分かりやすい。そこは運送業の良いところの一つだと思いますね。「行けたら行きます」みたいなこと言う人って、ほぼほぼいない。仮に言ったとすると、「じゃ、来なくていいわ」とピシャリと言われたりするしw 私が入社当初「〇〇日に、休めたら休みたいんですけど」と運行管理に言ったら、「なんだそりゃ。〇〇日に休みます、って言え。この業界のやり取りは、直球で行こうぜ、直球で!」と言われたのは今では良い思い出。以上、余談。

実は打たれ弱いのかもしれない男、
その名は永田。

(『永田という男ぁ戮砲弔鼎)
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転職会議



あるミーティングの冒頭で、

「今後のミーティングは、近隣地域のゴミ拾いから始めます」

と、永田は真顔で言った。

ハァ? ゴミ拾ィィ?

これを聞いてちょっとのけぞる釜本、「まーたーなーがーたーがーさー」的な半笑いを浮かべる木下、そして激しく貧乏ゆすりをし始める吉田。

「永田さん、ちょっと何言ってんのかよく分かんねーんすけど」

と、釜本が軽快に永田へ斬り込む。

「ま、一言で言えば、地域一番の運送屋って何かね? ってことだよね。会社の周りはゴミだらけだけど地域ではナンバーワンって、そんなことは絶対にあり得ないわけ」

これを聞き、
「いやいや、ゴミ拾いするためにこの会社に入ったわけじゃねーし!」
と吉田が脊髄反射的に言うと、永田はそれに食い気味で、

「じゃ、辞めれば?」

……。
シーン。
永田チャンそれを言っちゃあおしめーよ的、シーン。
永田は続けて、

「もうこの際だからハッキリ言っておくけど、地域一番になるために、ついて来れずに脱落する人が出ちゃうのは仕方がない。だから、俺はもう無理だなーと思うなら、今すぐ辞めてもらって全然かまわないから」

と、吉田しか見ずに言ってるし。
あんだと永尾、だったら辞めてやるぜ、コンチクショー!的に吉田は立ち上がるかと思ったけど、口を真一文字に結んだまま貧乏ゆすりを続けるのみ。…吉田よ、怒りのあまり、実は痙攣してるとかじゃないよな?

ミーティングの後、みんなで緑色の「こんなダサいユニフォームどこで売ってたんだよ」な上着を着て、ゴミ袋とゴミばさみを持って近隣地域のゴミ拾い。
永田と一緒に歩きながら、
「いやー、さすが永田さんっすわ。俺らにこの発想はなかったっすわ」
と露骨に太鼓を持つ今岡うんこリーダー。いまおかマジで犬のうんこ踏んでほしい。

吉田は明らかにふて腐れた様子で参加していたのに、たまたま通りかかったおばあちゃんに、
「きれいにしていただいて、ご苦労さまです」
となぜか話しかけられた上に頭まで下げられ。ちょっと嬉しかったのか照れ笑いをする吉田。それを見逃さなかった木下はすかさず、
「よっしー、なに照れてんの? あのババア、たぶん永田の仕込みっすよ
とか言ってるしw

地域のゴミ拾いを続けていけば、
「おたくの会社の社員、時々ゴミ拾いしてるでしょ。えらいな〜と思って前から見てたんだよね。そんなわけで、ウチもちょっと荷物をお願いしてみようと思ってね」
という営業効果が中長期的にはもしかしたらあるのかもしれない。でも、ゴミ拾いに営業的な即効性など無いのは自明。

なんかさー、永田さんが来ていろいろ面倒くさくなっただけで、給料全然上がらんし、むしろ永田という食い扶持が一人増えた分だけドライバーの給料、逆に減ってんじゃあ?

と今岡うんこに愚痴ってみたら、

「あれ、株六くん、まだ聞いてないんだ。畏れ多くも、永田さんだよ? 当然、てっぺん獲るための腹案があるに決まってるでしょ。次回のミーティングで発表するんじゃないかな」

腹案ねえ。。
…鳩山せんせいとどっこいどっこいな腹案だったら、その場で声出して笑っちゃうかも。

てっぺん獲るための腹案を持つ男、
その名は永田。

(『永田という男ァ戮砲弔鼎)
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【Ripple】投資信託相談



ある日、昼過ぎに出社すると、会社の前に見慣れぬキャリアカー(車を運ぶためのトラック)が停まっていた。この時は、
「おや? 誰かのマイカーが故障したのかな?」
くらいしか思わずに、普通に点呼して出庫。
その日の配達を終えて車庫へ行くと、例のキャリアカーが駐車されていた。

…そう言えば、永田の前々職は中古自動車販売業だったっけ。
このキャリアカーは、腹案絡みか?

次のミーティングで、永田はなぜかユニフォームではなく、スーツでビシっときめてきた。さすが元トップ営業、スーツ姿が映えていて取締役みたいだ。

ミーティングが始まり、永田、
「ま、みなさん、気づかれている方もいると思いますが、最近キャリアカーの中古が入りました」
と言うなり、イキナリ立ち上がって、

「グッドトランスポートのナンバーワンへの道は、1台のキャリアカーから始まった」

とプロジェクトXっぽく言い、「こういうこと。こういうことからなんだよ。分かるよね」と無理やり感の漂う笑顔を振りまく永田。キモイ。シンプルにキモイ。
木下が、
「え? つまり、イマオカンが言ってた永田さんの腹案って、車の陸送ってこと?」
と言い、続いた吉田はちょっと小ばかにする感じで、
「陸送でナンバーワン? ぷっ。それって、後ろから数えてナンバーワンなんジャネ? なんつって!
永田は吉田の発言にピクっと反応するも、軽くにらみつけただけで珍しく反撃せず。
そして、その腹案の詳細を話し始めた。

要点をまとめると、

・街で時々見かける不動車(錆ついてたりパンクしてたり、ホコリをかぶってずっと放置されているようなオンボロ車)を見つけて(ほぼ捨て値で)買い取る。持ち主が高齢だったり、親が亡くなり空き家になってる実家に放置されている車が特に狙い目。まだ動く車なら尚良い。
・中古マーケットで値段が付く車なら中古車屋に転売。愛好者が多い車種なら部品取り用で売れる。どーにもならんポンコツでも最終的には鉄くずとして売れる。
・不動車なんてホントに儲かるのかだとお? バカヤロウ、中古車販売営業全国ナンバーワン、しかもV2の永田さんだぞお? どんだけノウハウと人脈あると思っとんねーん!

「でも、永田さん、不動車なんてどうやって見つけんすか?」
「お、株六くん、いい質問! さすがインテリの人は違うねえ。じゃ、逆に質問。株六くんならどうやって見つける?」

ぬぉー、質問に質問で返しやがる。永田、やっぱ面倒くせえ。「すみません、間違えました」とか言ってやろうかとも思ったけど、無難に、
「うーん、例えば新聞のおくやみ欄チェックして、あれって住所が出てるから、それをとっかかりにするとか?」
と言ってみたら、永田はちょっと驚いた顔をし、
「おー! いいねいいね! うんうん、それもありかもしれない。俺が今のところ考えているのは」
と言い、自分のプランを話し始めた。

・ドライバーは近所や通勤、配達中に通る道で、不動車や放置されてそうな車がないか、常によく注意してほしい。友人知人からの情報も意外に有用なので軽んじないように
・自社からおよそ50キロ圏内なら、1台見つける度に報奨金として1000円を支給する
・買い取れた場合は、1台につき5000円+αの報奨金を発見者に支給する
・3か月おきに、報奨金の額がナンバーワンの者(永田除く)にトップ賞として5万円を支給する
・年間で報奨金額トップだった者には、チャンピオン賞として実績に応じた額を支給する。年間トップなんだから、もちろん10万20万なんていうセコイ金額じゃないぞ!

「不動車を見つければ見つけるほど、買い取れば買い取るほど、会社が儲かるだけじゃない。キミらも儲かるんだ。いや、キミらこそが儲かるんだ。社員の努力には金銭で確実に報いらなくちゃいけない、俺が言うナンバーワンの会社とはそういうことももちろん含んでいる!」

と熱弁を振るう永田。

報奨金システムという予期せぬ美味しそうなエサがぶら下がり、急激に沸き立つドライバーたち。

永田、こいつ、実はすげー奴なんじゃ?
オレら、ちょっと見くびっていたのかも?

ドライバーらが食いついてきている空気を察知した永田は、さらに熱い口調でエネルギッシュに、

「俺はてっぺんの風景を知っている。そして、てっぺんへの行き方も知っている。だから、本気に、真剣にキミらがついて来てくれるなら、俺は一人残らずてっぺんへ連れてくよ。真面目な話、これは本当に約束する。だから、みんな、生まれ変わろうぜ、今日から。いや、今この瞬間から、今すぐにだ!」

永田にすっかり煽られて、ドライバーの多くは興奮状態。

NA・GA・TA!!
NA・GA・TA!!


…にしても。
ベアも無い、退職金制度も設けないドケチ社長なのに、こんな報奨金システムよく受けいれたなあ。
そう言えば、このミーティングに社長と専務がいないのは、たまたまか? それとも…。

てっぺんを知り、その行き方をも知る男、
その名は永田。

(『永田という男Α戮砲弔鼎)
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【Ripple】投資信託相談



また、吉田がトラックをぶつけた。

会社から指示された道で行ったら、たまたま緊急な道路工事をしていて通れなかったらしい。仕方がないんで脇道に入ったら意外と狭く、ある曲がり角で、
「無理か? いや、通れるか? でも、やっぱ無理か? いやいや、意外と行けちゃうんジャネとか言っちゃったりしながら行っちゃったりして!」

ガガガガ!

アルミの箱にモールス信号風なキズを1m弱つけて帰って来た。

吉田に唯一いい所があるとしたら、ぶつけた時に決してしらばっくれず、正直に必ず報告することだ。

「ぶつけた日の退社前の点呼までに正直に報告した者にはペナルティを課さない」

というのが、この会社の暗黙のルール。ま、事故報告書を書かされて、次回のミーティングの時にみんなの前でそれを発表する、というのがペナルティと言えばペナルティだけど。

永田もこの方式で、今までは特に文句を言わずに来ていた。
が、永田が入社して以降、吉田がぶつけたのは今回で3回目だった。
仏の顔も三度まで。永田の顔も…。

ミーティングで吉田が事故報告をした後、永田が言った。

「えーとね、俺がこの会社に来てまだ半年経ってないと思うけど、その間に吉田くん、もう3回目? だっけ?」
「たぶん。…ま、ちゃんと数えてねーけど」
吉田は特に悪びれもせず言った。
永田は「数えてられねーほどぶつけてんじゃねーよ」とあからさまに言い、吉田を見ながら大真面目な顔で、少し怒気さえ込めて、

「あのさ、素朴な疑問なんだけど、吉田くん、運転してる時って眼ェ、ちゃんと開けてんだよね?

うわー。
永田さん、それ、大真面目な顔で言いますか。

思わず吹き出す釜本。右手の甲をおでこに当ててコスる振りをしているけど本当は笑いをこらえているのだろうヒクヒクする木下。そして、みるみる顔が真っ赤になっていく吉田。

「もちろん、開けて…」
「いや、開けてない! おまえは絶対に開けてない!!」

食い気味に怒鳴りつけ、突然キレる永田。こ、怖ぇぇぇ。

「開けててなんでこんな狭い角を曲がろうとすんだよ。2トンで悩むならまだしも、4トンだぞ。4トンで行くような角じゃねえだろ!」

と大声を出し、机を右手でバシーーーーン!!
永田のキレっぷりにみんなドン引きして、笑っていた釜本も木下もシーーーーン。
アイス食べてキーン。あいつ喋ってシーン。

何十秒かして専務が、
「まーまー、永田さん、このご時世、パワハラって言葉もあることだし…」

永田は専務をちらっと見て、軽く頭を下げてから、

「これだけは言っておくけど、今後『行けるかな? 無理かな?』というシーンに出くわした時に、みんなに必ず思い出してほしいのは、
『もしも、これでぶつけたら10億円の賠償』
って言葉。もちろん実際には10億円の賠償なんてことはない。でも、それくらい気をつけて行けるか行けないかの判断をしてほしい。ぶつけたら10億円。こう思えば、100%行ける確信がなければ絶対に行かないでしょ? だって、10億円だよ、10億円。ぶつけたら10億。今後、狭い道では必ず思い出してほしい。そして、今回のような、行けると思って行ったらやっぱり行けませんでしたというクソみたいな事故は絶対になくしてほしい」

今岡リーダーが手を挙げ、
「初めて行く道で、この先が通れるか通れないか分からないって時、あるよね。そういう時は無闇に行かないで、グーグルマップの写真やストリートビューで道幅を確認してみるとか、トラックを駐車して問題ない場所なら、トラック停めていったん降りてさ。で、歩いて先の道をちゃんと確認しに行くのが一番確実だよね。そういうところ、横着しないでさ、ちゃんとしていこうよ。ぶつけたら10億円、いやぁ、この発想はなかったっすわ

イマオカン、途中まではせっかくイイこと言ってたのに、なーんか下手っぴ。

* * *

ミーティングの後、ドライバーだけになった休憩室。

「永尾のやろー、俺のことおまえって言ってたよな? まじムカつくのー」
「かわいちょーに、思っきり怒鳴りつけられちゃったね、ぶつけん坊将軍!」
「誰がぶつけん坊将軍じゃ!」
「にしても、あの人、あんなキレ方するんすね。机バシーンとか叩いちゃったりして」
「てか、知ってる? 専務のキレ方もあんな感じよ」
「え? マジで? 専務がキレたとこって見たことないかも」

専務がキレるところも、いずれ見ることに…?

10億円というフレーズを聞くと思い出す男、
その名は永田。

(『永田という男А戮砲弔鼎)

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【Ripple】投資信託相談

※今回はちょっと番外篇w

昼前出社だった、ある日のこと。

点呼場兼休憩室へ行くと、つやつやロングヘアーのおねいちゃんがイスに座っていた。
「あ、おはようございます〜」
振り返ってそう言い、にこりと笑った。

おおお、おっとー! めるるやんけ!!

と思わず言いそうになったほど、めるる似の美形。

なんだなんだ、生命保険の営業か??

と一瞬思ったものの、なぜかウチの制服を着ているぞ。。

「今日からお世話になります、藤田です! あは」

えーーー。
うっそーーーー。
そのルックスで、なぜトラックドライバーーー。
そして、なぜこんな零細弱小うんこ運送屋に来てんのーーーー。

聞けば、24歳。
元々は、ぶつけん坊将軍・吉田行きつけのキャバクラの女のコだったそうな。
それがコロナで失業し、なぜか吉田のつてで入社したんだとか。

吉田に、まさかこんな才能があったとわっ?!
そいや、あいつ、お姉さんいるって言ってたな。お姉さん持ちの男って、女心掴むのホント上手いよね。

今までは新人が来ると、その教育係はほぼ今岡リーダーだったのに、今回はなぜか永田が担当することに。

ちなみに永田、バツ2、現在独身。
今まで書いてきたように、いろいろパワフルでエネルギー度高し。
英雄、色を好む、と言うが。…果たして永田は??

「永田さん、トラックの乗り方だけじゃなくて、男の乗り方まで教えてたりしてなあ!」
と軽口を言った木下をぶん殴りそうになってる吉田。

* * *

ある日のこと、22時過ぎに帰庫して点呼をしに事務所へ行ったら、釜本がちょうど帰るところだった。

「そう言えば株六さん、藤田のアレって、知ってます?」
「藤田のアレ? なんそれ」
「実はよっしーが用意した、永田さんへの刺客って噂っすよ」
「ハァ〜? 刺客う?? 藤田があ? むしろ、ちんぽ刺してんのは永田さんの方だろ」
「…あーあー、ちんぽ言っちゃったよコレ」

そして。
しばらくは、何もなかった。

永田は今日もめるると仲良く出庫していく。
いいなー、めるるが横に乗ってたら、そら楽しいやろな〜。

「ダメだよめるる、ギアはもっと優しく握らなくっちゃ」

とか言ってんのかなー。バカヤロー、永田のバカヤロー!

1ヶ月ほどして、藤田は無事に独り立ちした。
キャバクラで鍛えた接客能力のおかげか、人当たりが良くて気が利く。にじみ出る雰囲気が優しく、何よりもあのルックスであの若さ。お客さんにももちろん好評だった。荷積み先である某菓子メーカーの二代目スケベ副社長に飯に誘われたとか誘われてないとか。

* * *

ところで、この会社の給料は激安だけど、休憩室にあるペットボトルや缶なドリンクは飲み放題で、用意されているおやつ的なお菓子&軽食も好きなだけ食えた。

「こんなしょっぺーもんがタダより、日給を上げてほしいよな」
「いやいや、無理っしょ。社長、ドケチやし」
「でも、俺が前にいた会社は、ドリンクすらも自腹だったっすよ。そこと比べれば、ここの方がまだ全然マシっす。むしろいいなって感じすらします」
「なにマンマと飼いならされてんだよ。どー考えてもドケチだろ、あいつら」

そんな会話をしてからしばらくして、唐突に、
「一日、一人2本まで」
とドリンクを制限する掲示が冷蔵庫に貼られた。

休憩室にも防犯カメラがあるので、この間の会話を社長が聞いてもーてブチ切れたからだ、という奴もいたし、永田の腹案のせいで支払う手当てが増えたことに気づいた経営層が早速ケチり始めたんじゃねーの? という奴もいた。

いずれにしろ、この会社の経営層のケチさ加減は半端ない。

* * *

本数制限の掲示が出てから4日後くらいだったろうか。
東名の事故渋滞のせいで、0時過ぎに帰庫した時のこと。

事務所の前に、藤田の車が停まっていた。
「あー、あいつも事故渋滞に巻き込まれてたんだな」
と思いながら階段を上がっていくと、【休憩室用】と書かれたダンボールを抱えて藤田が階段を降りてきた。

「あ!」

俺に気づいた藤田が一瞬「やっべー!」という顔をしたのを、見逃さなかったぞ、オリわ!

「おぉ、藤田、お疲れ」
「お疲れ様です! 株六さんも東名のアレ? 私だけじゃなかったんだー、ちょっと嬉しいです。(ё▽ё) きゃは!

と、まぶしい笑顔を見せる藤田。
しっかしホントにめるるに似とるなー。その笑顔、激カワやん。
…いや、ちゃうちゃう。ちゃうやろ。

藤田よ。
抱えているそのダンボールはなんぞや?
一日一人2箱じゃなかったよな?
それはアカンで。いくらめるるに似てても、それはアカンて。

と、一瞬ツっこもうかと思ったけど、すぐにイヤな予感がしてやめた。

だって。
この、深夜の事務所には。
俺と藤田しかいない。
わけなんです。

正義感丸出しでツッコんだりすると、

「キャアアアア!! このハゲの男が待ち伏せをしていて、このハゲの男にレ〇プされそうになったんです、あたし!! そうです、このハゲの男です!」

とか叫び出しかねんぞ、こういうタマは。

一方は40代後半のズルムケ頭なハゲオヤジ、もう一方は24歳つやつやロングヘアーで笑顔のステキなめるる。
世間はいったい、どっちの言い分を信じるよ?

「分かる、分かるよ。出来心っちゅーやつだよね、うん、うん、分かる、分かってるんだ。大丈夫、とりあえずパトカーに乗ろう。署でね、話はちゃんと署のほうで聞くから」

そんなリスクを負う意味がいったいどこにあるう?
しかも、ドケチ経営者たちのためにい?


それからしばらくして、藤田は辞めた。
午前10時点呼なその当日の朝9時半くらいに、退職請負NPOみたいなところから事務所にいきなり電話がかかって来て、
「昨日付で藤田は辞めます」
と一方的に通告してきて退職したんだそうな。

ほえ〜、こんな会社の辞め方ってあるう?
さすが20代、今風の若者だね〜。今風の若者ですね〜。

これ以降、キツイ配車が続いた時などに、
「俺ももう藤田っちゃおっかなー」
と愚痴るのが社内で流行w


藤田がいなくなった休憩室では、

永田が一発ヤってすぐに捨てたから深く傷ついてしまったんだ!

とか、

永田をハメるつもりが逆に永田にハメられてすっかり夢中になった藤田に吉田が激怒してストーカー化したため辞めざるを得なくなったんだ!

とか、

某菓子メーカーの二代目スケベ副社長にラブホへ連れ込まれそうになってグーパンチをお見舞いしたら、それ以降の荷物がすべてキャンセルになってもーて、その責任を取らされたんだ!

とか。
いろいろ噂はあった。

「永田さん、藤田ってなんで辞めたか知ってますか?」
「藤田なー。うーん、一言で言えば、『ナンバーワンを目指す会社には、ふさわしくなかった』ってことかな」
「なんすか、それ」
「なんつーか、すごい美人で気も利いて、とても優しくて性格も良い。
そんな女性に、何もないわけねーだろ、ってこと。あるんだよ、もちろん裏の顔がさ。ないわけがない。藤田の件も、ま、そういうことなんだよ」

俺が見たのも、裏の顔だったのだろうか。
いや、あんなもんじゃねーだろ、裏の顔って。

てっぺんの風景だけじゃない、いろいろと裏の顔も見てきた男、
その名は永田。

(つづく。…つづかないかもw)

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お金の教養講座

OKジョブシニア

永田の腹案は発表されて以降、社内では「永田システム」と呼ばれ、徐々に定着しつつあった。

3か月ほど経つと、個人のモチベーションによって成績に明らかな差がついていた。
トップ賞はドライバーとして今まで全然目立たない存在だった新田。この1か月で26台、3か月トータルで50台を超え、栄えある最初の四半期トップ賞に輝き、賞金5万円をゲットした。発見のみで終わって1台も買い取れていなかったとしても、発見報奨金1000円×50台超、そこにトップ賞の5万円で最低でも10万円を獲得、さらに買い取れた時のボーナス分も当然プラスされているだろう。

「新田くん、すごいねえ! この1か月なんて平日ベースで1日1台以上だよ。それも仕事しながらだよ。新田くん、実はそれ用のバイトでも雇ってんじゃないのお? アハハ。もう俺は今後3か月『素晴らしい』という文字はニッタと読むことにしちゃう! なんつって。アハハハ」

と、ミーティング途中に設けた授賞式で上機嫌に語る永田。と思ったら、

「でさー」

と言い、急に真顔になる永田。

「吉田くん、吉田くん。ちょっと俺の見間違いだったら悪いから、自分の口から言ってもらいたいんだけど、吉田くんは結局3か月で何台だったんだっけ?」

永田が吉田を見ている。
吉田だけをまっすぐに見ている。
あの眼。
あれは、クソにたかるハエを見る時の眼だ。

「は? ゼロだけど」

特に悪びれもせずに言う吉田。

「そうかー、やっぱりゼロかー。つまりこの3か月間、吉田くんはウンコしてトラックぶつけてただけってことだよね」

「は? 別に強制じゃないでしょ? 何でディスられなきゃ…」

「ディスってねーよ! 事実を淡々と話してるだけだろ!!」

で、バシィーーーーーン!!

わー、永田、また机叩いてんよ。。

「まーまー、永田さん。個人攻撃はやめましょう。あなたらしくもない」

と、珍しくしゃしゃり出て来る専務。

…あなたらしくもないって、吉田を徹底的に詰めて口答えしてきたら怒鳴って机を叩くなんて、もはや永田のお家芸だと思うんですけどー。

「社長や永田さんとも話したんだけど、どうやったらドライバーのみんなにもっとやる気になってもらえるのか、そしてもっともっと稼いでもらえるのか、事務所の中でちょっと話をしました」

と専務は語り始めた。要点をまとめると、

・日給をちょっと1000円下げる
・その代わり、発見報奨金を倍の2000円にアップ
・3か月トップ賞を10万円にアップ
・買取ボーナスを25%アップ
・年間トップ賞を倍にする

「ん? 日給を1000円下げることに、みんなドン引きしてる? これはね、ボクは前から思ってるんだけど、日給ってそもそも何かねって話でね。キツいバラ仕事しても楽なパレ仕事しても日給は同じってちょっとおかしいと思わない? 本来はそういうところは手当なりなんなりで報いていかなくちゃいけないんだろうけど、ウチみたいな小さい会社はなかなかそこまで手が回らなかったんだね。みなさんには本当に申し訳ないなあと思っていたところに、永田さんから今回のご提案をいただいてね。これでウチの会社にも、その頑張りに応じて頑張った人がちゃんとその分の報酬をもらえる素晴らしいシステムが出来たね、と社長もたいへん喜んでいました。というわけで、今月からこのシステムでいきますから、みなさん、よろしくどうぞ!」

満面の笑みで語る専務。

「ま、何もないと思うけど、何か質問ある人いるかな。まあいないよね?」

前置きの言葉といい、専務からにじみ出ている「下郎の分際で専務に質問しようとは甚だ無礼であろう」なこの雰囲気。これ、手ぇ上げられるやつなんておるんかいな。。

「せんむ、ちょっといいっすか」

きた! 手を挙げたのは、釜本だ。以前、永田から一矢を報いた唯一の男。吉田の飲みの誘いを容赦なく秒で断った男。行けい、釜本! 持ち前のADHDさ全開で空気を読まずに、そのまままっすぐドケチを斬れ! 専務を討ち取ってしまえいっ!!

「バラとパレットで同じ日給は不公平だなーというのはオレも前から思ってて。でも、今回、日給は一律で1000円下がるんですよね? 払う日給が1000円減るんだから、そりゃ会社にとってはいいシステムでしょうよ。そこは分かります。でも、オレらにとっては何がいいのか全然わかんねーっす」

「ははは、なるほどそうか、そういう風に捉えちゃったんだ。違う違う、釜本くん、全然違うんだよ。ドライバーのみんなに注目してほしいのは、頑張った分だけちゃんと報酬をもらえるってとこ。そこはちゃんと事務所サイドでちゃんと計算してます。完璧にシミュレーションもして、うんこれは間違いなくドライバーのためになるよねってことで、社長の了解もちゃんと取れているから。だから、そこは絶対的に心配しなくても大丈夫。安心してください」

( ゜,_・・゜)ブブブッ
何やこの回答。
専務、結構アホやな。。

口を開けたまま専務の回答を聞いていた釜本は、

「日給が千円減りますー、頑張った分はもらえますー、心配しなくても大丈夫ですー。…で、結局オレらにとっては何がいいんです?」

専務の笑顔がちょっとひきつり始めている。。

「あー、そこから? なんだ、釜本くん、意外とアタマ固いな。ごめんごめん、そこにちょっとびっくりしているボクがいるって感じ。ははっ。なんて言うかなあー、木を見て森を見ず、って言葉があるけれども。釜本くんは木を見過ぎているんだね。ボクは森の話をしている。もちろん、事務所の中でもしていたのは森の話なんだ」

と専務が話している途中で釜本がしびれを切らし、

「だからあ! オレらにとっては何がいいのかって聞いてんだっつーの!!」

と怒鳴り口調で言いやがった。わはは。

いいぞ、釜本!
専務を殺ったれい!!


釜本の怒声を聞いて、専務の顔から作り気味だった笑みが消えた。「あ゛あん? っつーのだと? っつーのって、誰に言ってんだ小僧。ナメた口きいてけつかりやがって」とボソっと言った後、みるみる目が吊り上がったと思ったら、バシーーーン!と机を叩き、

「今岡あああああ!! おまえはどんな教育しとんじゃああああ!!」

と拡声器なみの大声で今岡リーダーを怒鳴りつけ、机にあったペンを拾ってオーバースローで今岡へ投げつけた。

う、うわあ。。
専務ってMAXにキレると物投げつける系の人じゃん。やっべー。

「いや、違う違う。専務、言ったの俺じゃないって、釜本だって。俺言ってないって」
「いまおかああ! 全部おまえが悪いんじゃあああ!!」
と叫びながら今岡につかみかかった。専務の変身を知っている者は慣れた手つきで机やイスをどかしたりずらしたりし、初めて知る者はイスに座ったまま「え」「うそ」「まじか」と呆然とつぶやくのみ。専務は、「だから専務違うって」と叫ぶ今岡をそのままものすごい力で引きずって事務所という巣穴へ消えた。
巣穴からは、本来サブウーファーからしか聴こえてこないはずの重低音が断続的に響いており。

重い空気で静まりかえるミーティングルーム。
口を開いたのは、釜本。

「永田さん、モンスターいなくなっちゃったみたいなんで代わりに答えてもらっていいっすか?」
「んん? 俺か? まー、元のアイディアは俺が提供したんだけど、給料面の細かい数字とかは社長と専務で決めてるから、俺は実際のところは何も答えられないんだわ」
「えー。永田さん、もう正直ベースでいきましょうよ、正直ベースで。ブッチャケ今回の変更って本当にオレたちのためなんすか」
「俺の原案では、ちゃんとそうなってる。後は社長のサジ加減でどうなったかだな。ま、来月再来月の給料明細を見ればその辺はハッキリするだろ。とにかく俺は、今までも言ってきたように、この会社をナンバーワンにすることが使命だし、それが当然できると思っている。もし、それが信じられないなら辞めちまえっちゅーの!! なんつって」

シーン。
「っつーの!」でもう既に一人、犠牲者が出てんだよ。
笑わねーよ、誰も。

永田は、専務が投げたペンを拾いながら、
「これさー、実は俺のペンなんだよね。ほら、ここに名前入ってるでしょ? 専務、人のペン投げちゃうんだもんなー、ひどいよなー。物を大切にしない人は、結局は人も大切にしないんだぞお。あ、これは独り言だから」

そう言えば、永田の下の名前って何ていったっけ? と思ってペンを見せてもらったら、

Nagata No.1

うわぁ。
ダッサ! ハッズ!!

自分のペンに「Nagata No.1」とネームを入れている男、
その名は永田。

(つづく。…つづかないかもw)

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