ある日、一人の男が入社した。
その男の名は、永田、といった。
某有名中古自動車販売店に入社後、32歳で社内営業マンの中で全国1位を獲り、翌年連覇。
「この会社に、俺が学ぶべきことはもうない」
と、突然某上場大手運送会社へ転職。ただのドライバーから始めるも、持ち前の能力をフルに発揮して40手前でセンター長に。
たくさんの部下を持ったことで、人を育てることに面白味を感じ、
「大きな会社をより大きくするより、小さな会社を大きくする方がもっと面白いんじゃないか?」
と感じ、某中小運送会社へ転職。が、安全面を最優先する永田に対し、社長は利益を最優先したため度々衝突。そんな中、配達中に人身事故が発生。それでも利益を最優先する社長の姿勢は変わらず、キレた社長が永田に言い放った、
「とりあえず誰も死んでねーだろ? 何が問題なんだ?」
にキレて退職。
そうして、永田は従業員十数名、トラック18台のウチの会社にやって来た。
背は170cmくらい、中肉中背。髪型はオールバック、元営業だけあって普段の目つきは柔らかめだけど人を見る時の目力は強し。何かつけているのだろう、ちょっといい匂いがする。
最初のミーティングの時から、永田はなかなか強烈だった。
入社後のよくある自己紹介は、名前、簡単な経歴、趣味、この会社でやりたいことなど、短い人なら1分も喋らず、長い人でも10分程度ではないだろうか。
永田は自己紹介と称してナント70分近く一気に喋りとおした。…永田独演会かっ!
冒頭に書いたような経歴を話した後、なぜ安全面が最優先されるべきなのかの思いを熱く語った。
前職で安全面を軽んじていた社長に懲りたので、この会社に入社する前に、社長に「ホントに安全面を最優先する経営をしますか?」と何度も確認し、最終的には社長に念書まで書かせたそうな。
「俺はこの会社を、まずはこの街で一番の運送会社にする! そういうつもりで入って来てるから」
とブチ上げる永田。
これを聞いて、思わず吹き出すドライバーの釜本。
「おい、あんた。今なんか笑ったろ」
釜本を指さして、にらむ永田。
一気にピリつく室内の空気。
釜本は、「え〜、最初のミーティングなのに永田ちゃんこんな感じで来ちゃうんだあ」とおどけた顔を辺りにしてから、
「あ、すんません、今のってちょっと思い出し笑いみたいです。ははっ」
と何本か脱落している前歯を見せた。永田はこれ以上は釜本につっかからず、
「みなさんが銀行でローンを組もうとした時に、ウチの会社名を言うだけで行員が『あー、あの会社の社員さんでしたか。でしたら、審査は必要ありません。いくらでもお貸しします』って言われるくらいの会社を目指すし、そういう会社にするつもりで俺は来てるから!」
おいおい、止まんねーな、永田!
ウチが地域で一番?
社員が無審査でローンが通るような会社を目指すだって?
社員が20人もいない、この超ちっせー会社が?
冗談を言ってるなら全然面白くないし、
本気で言ってるならアホやでこいつ。
と、冷ややかなドライバー連中。
そんな中、一人燃えたぎる男、
その名は永田。
(『永田という男�◆戮砲弔鼎�)
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