ある日、昼過ぎに出社すると、会社の前に見慣れぬキャリアカー(車を運ぶためのトラック)が停まっていた。この時は、
「おや? 誰かのマイカーが故障したのかな?」
くらいしか思わずに、普通に点呼して出庫。
その日の配達を終えて車庫へ行くと、例のキャリアカーが駐車されていた。

…そう言えば、永田の前々職は中古自動車販売業だったっけ。
このキャリアカーは、腹案絡みか?

次のミーティングで、永田はなぜかユニフォームではなく、スーツでビシっときめてきた。さすが元トップ営業、スーツ姿が映えていて取締役みたいだ。

ミーティングが始まり、永田、
「ま、みなさん、気づかれている方もいると思いますが、最近キャリアカーの中古が入りました」
と言うなり、イキナリ立ち上がって、

「グッドトランスポートのナンバーワンへの道は、1台のキャリアカーから始まった」

とプロジェクトXっぽく言い、「こういうこと。こういうことからなんだよ。分かるよね」と無理やり感の漂う笑顔を振りまく永田。キモイ。シンプルにキモイ。
木下が、
「え? つまり、イマオカンが言ってた永田さんの腹案って、車の陸送ってこと?」
と言い、続いた吉田はちょっと小ばかにする感じで、
「陸送でナンバーワン? ぷっ。それって、後ろから数えてナンバーワンなんジャネ? なんつって!
永田は吉田の発言にピクっと反応するも、軽くにらみつけただけで珍しく反撃せず。
そして、その腹案の詳細を話し始めた。

要点をまとめると、

・街で時々見かける不動車(錆ついてたりパンクしてたり、ホコリをかぶってずっと放置されているようなオンボロ車)を見つけて(ほぼ捨て値で)買い取る。持ち主が高齢だったり、親が亡くなり空き家になってる実家に放置されている車が特に狙い目。まだ動く車なら尚良い。
・中古マーケットで値段が付く車なら中古車屋に転売。愛好者が多い車種なら部品取り用で売れる。どーにもならんポンコツでも最終的には鉄くずとして売れる。
・不動車なんてホントに儲かるのかだとお? バカヤロウ、中古車販売営業全国ナンバーワン、しかもV2の永田さんだぞお? どんだけノウハウと人脈あると思っとんねーん!

「でも、永田さん、不動車なんてどうやって見つけんすか?」
「お、株六くん、いい質問! さすがインテリの人は違うねえ。じゃ、逆に質問。株六くんならどうやって見つける?」

ぬぉー、質問に質問で返しやがる。永田、やっぱ面倒くせえ。「すみません、間違えました」とか言ってやろうかとも思ったけど、無難に、
「うーん、例えば新聞のおくやみ欄チェックして、あれって住所が出てるから、それをとっかかりにするとか?」
と言ってみたら、永田はちょっと驚いた顔をし、
「おー! いいねいいね! うんうん、それもありかもしれない。俺が今のところ考えているのは」
と言い、自分のプランを話し始めた。

・ドライバーは近所や通勤、配達中に通る道で、不動車や放置されてそうな車がないか、常によく注意してほしい。友人知人からの情報も意外に有用なので軽んじないように
・自社からおよそ50キロ圏内なら、1台見つける度に報奨金として1000円を支給する
・買い取れた場合は、1台につき5000円+αの報奨金を発見者に支給する
・3か月おきに、報奨金の額がナンバーワンの者(永田除く)にトップ賞として5万円を支給する
・年間で報奨金額トップだった者には、チャンピオン賞として実績に応じた額を支給する。年間トップなんだから、もちろん10万20万なんていうセコイ金額じゃないぞ!

「不動車を見つければ見つけるほど、買い取れば買い取るほど、会社が儲かるだけじゃない。キミらも儲かるんだ。いや、キミらこそが儲かるんだ。社員の努力には金銭で確実に報いらなくちゃいけない、俺が言うナンバーワンの会社とはそういうことももちろん含んでいる!」

と熱弁を振るう永田。

報奨金システムという予期せぬ美味しそうなエサがぶら下がり、急激に沸き立つドライバーたち。

永田、こいつ、実はすげー奴なんじゃ?
オレら、ちょっと見くびっていたのかも?

ドライバーらが食いついてきている空気を察知した永田は、さらに熱い口調でエネルギッシュに、

「俺はてっぺんの風景を知っている。そして、てっぺんへの行き方も知っている。だから、本気に、真剣にキミらがついて来てくれるなら、俺は一人残らずてっぺんへ連れてくよ。真面目な話、これは本当に約束する。だから、みんな、生まれ変わろうぜ、今日から。いや、今この瞬間から、今すぐにだ!」

永田にすっかり煽られて、ドライバーの多くは興奮状態。

NA・GA・TA!!
NA・GA・TA!!


…にしても。
ベアも無い、退職金制度も設けないドケチ社長なのに、こんな報奨金システムよく受けいれたなあ。
そう言えば、このミーティングに社長と専務がいないのは、たまたまか? それとも…。

てっぺんを知り、その行き方をも知る男、
その名は永田。

(『永田という男Α戮砲弔鼎)
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